世界初の同性婚を実現してから20年。ペーター・ファン・デル・フリート駐日オランダ王国大使が率先して取り組む“平等な権利”の促進活動

オランダ王国大使館のペーター
さんのインタビュー

誰もが平等な権利を持ち、安心して生きられる社会へ歩みを進めるためのマイルストーンとして2001年4月1日、世界で初めて同性婚を実現させた国、オランダ。

長年、オランダで過ごし、現在は駐日オランダ王国大使として東京で外交に従事をしているペーター・ファン・デル・フリート氏は、日本のLGBTIを取り巻く環境や同性婚の現状についてどのように考えているのだろうか。

そして日本もまた法の下、誰もが平等な権利を持って生きられる社会になるためには、どのような取り組みを進めていくべきかを伺った。

プライドハウス東京レガシーのオープニング

すべての人が平等な権利を持ち暮らせる社会へ。日本のLGBTIコミュニティをサポートするオランダ王国大使館

ーー日本におけるLGBTIの平等な権利促進のために行っている、オランダ王国大使館の活動を教えてください。

通年の活動としては東京レインボープライドへの出展や札幌、九州で行われているレインボープライドへの応援メッセージを通して、各地域のパートナー団体と協力しながらLGBTIコミュニティの平等な権利の促進を行っています。

具体的にはオランダにおける同性婚の実現までの経緯やLGBTI団体の活動例、そして日本におけるパートナー団体が大切にしているモットーへ尊重の意を示すことです。この2つを伝えることがパートナーであるLGBTI団体に所属している一人ひとりの自信に繋がると考えています。

また、日本で初めて常設された総合LGBTQセンター『プライドハウス東京レガシー』のコンソーシアムに参加し、多様性やセクシュアルマイノリティ、LGBTIコミュニティに対する社会全体の意識を高めすべての人が平等に生きられる社会にするという彼らの使命をサポートをしています。

直近では東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて、トランスジェンダーのアスリートに関するウェビナーも共同開催し、オランダのトランスジェンダーのアスリートが、オランダのオリンピック委員会とスポーツ連盟が作成した「ジェンダーや性の多様性を持つ人々に関するガイダンス」のプレゼンテーションを行いました。

この他にも日本のLGBTI団体を対象にしたオンラインプログラムでは、オランダのプレゼンターを招き、本国の教育や青少年、法律をトピックに挙げディスカッションの場を設けるなど、平等な権利促進のために様々な活動をしているところです。

トランスジェンダーを公表する選手の大会出場に関する特別ウェビナー(プライドハウス東京×駐日オランダ王国大使館)

ーー世論や自治体がLGBTIを受け入れ始めていく中、国がこの動きをより積極的にリードしていくべきだと考えます

日本がオランダのようにすべての人が平等な権利を持ち生きられる社会へと踏み出すために一番大切なことは何だと考えますか?

やはり、国のサポートがとても大切だと考えています。札幌地裁がいわゆる“結婚の自由をすべての人に”訴訟で下した「同性婚を認めないのは違憲」という判決然り、全国100カ所以上の自治体がパートナーシップ制度を導入、そしてLGBTI当事者だけでなく同性婚を支持する声が社会全体で高まっている中、次のステップに進むために国のサポートは必要不可欠です。

オランダの同性婚合法化を例にすると、特別に新しい法を制定・施行したのではなく、既存の法律を多くの国民が対象となるよう解釈の幅を広げる改正でした。

議員というのは法律の立案・改正をすることで誰もが暮らしやすい社会を目指すのが責務であるはずですが、保守的な人たちは同性婚に関して「法律違反であるから」「法律で定められているため認められない」と議論せずに話を終わらせてしまう。その姿勢に大きな疑問を感じています。より多くの人が平等な権利を持てるようオープンな社会を作り上げることが、今求められているのではないでしょうか。

「東京レインボープライド2019」オランダ王国大使館のブース

ーー最後に、オランダでは同性婚が法制化してから20年経過していますが、LGBTIを取り巻く現状はどのようなものなのでしょうか?

今から20年前の2001年、オランダでは改正法が成立し同性婚と異性婚が全く同じ条件と法的な結果をもたらすものとなりました。

もちろん、すべての議員が賛成したわけではなく、宗教などの観点から反対政党もありましたが、この同性婚法制化がマイルストーンであると位置づけ熱弁した議員がもたらした成果でもあるでしょう。

世界で初めて同性婚を成立させた国としてリードしていく存在ではありますが正直、未だに差別や暴力的な事件があることを耳にするのは確かで社会的に不安な面はまだまだたくさんあります。

20年という月日が経った今でも、我々が想像している最終目的地には達してはいませんが、毎年LGBTIへの反対意見というのが減少傾向にあるので、国としても力を入れ成長し続けなくては行けないと考えています。

◆ 駐日オランダ王国大使館・総領事館
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インタビュー・写真/芳賀たかし
記事制作/newTOKYO